秋の足音
朝霧の中にいるような薄暗いキッチンでお湯を沸かす
マグカップから伝わる暖かさが最近心地よくなってきた
今日はバスに乗らずに歩いて出勤
つむじ風に銀杏の葉がくるくると舞う
子供との散歩中
丁寧に手入れされた庭からほんの少し紅葉が見えた
鮮やかな赤が秋の空に映える
すると急に涼しくなった気がして
小さな手をきゅっと握った
新しくダークグリーンのスカートを買う
僕はこっちの方が好きだな、と勧められたのは
「いかにも女子です」なピンクのスカート
私は全く好きじゃない
自分のことは自分で決める
大通りの木も少しずつ色褪せてきた
移り行く季節
隣を歩く彼女とはそれなりの時間を共有してきたけれど
僕は彼女の何を知っているのだろう
秋風が立ってけやきの葉が散った
モンブランの頂上に乗っている大きな栗
どのタイミングで食べるのかしら?
と眺めていたら私と同じ
好きなものは最後まで取っておくタイプ
共通点が見つかるとちょっと嬉しい
バスを降りて家まで歩く
今日もお疲れ、と自分に呟く
ふと見上げた空は群青色で
高台から見下ろした街も青の群れに沈んだ
秋の夜はまだまだ長い